家族信託の手引き

信託口口座を銀行に断られたとき 受託者名義の専用口座との違いと確かめること

内容の確認日: 2026年11月4日

信託口口座を銀行に断られても、家族信託そのものができなくなるわけではありません。信託法34条は、金銭を「その計算を明らかにする方法」で分けて管理するよう求めています。口座の種類は条文に書かれていません。

ただし、受託者の個人名義の専用口座で代用すると、信託口口座より確かめることが増えます。断られた理由を聞き、別の金融機関や口座の形を比べ、契約書の分別管理の条項と口座の実態をそろえます。この記事は一般的な情報です。個別の判断は司法書士や弁護士などの専門家にご相談ください。内容は2026年11月4日に確認しました。

信託法34条が求めているのは「計算を明らかにする」こと

銀行のATMコーナーに並ぶ現金自動預け払い機
写真: Rebirth10 / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

信託法34条1項は、受託者に分別管理を義務づけています。財産の種類で方法が違います。

  • 信託の登記ができる財産(不動産など): 信託の登記をする
  • 登記ができない動産(金銭を除く): 外から見て区別できる状態で保管する
  • 金銭など、それ以外の財産: その計算を明らかにする方法

預金は金銭などの区分に入ります。条文は口座の名称も名義も指定していません。信託口口座は、計算を明らかにする方法として金融機関が用意している口座です。

34条には、ただし書があります。分別して管理する方法について信託行為に別段の定めがあれば、その定めによります。契約書に「信託財産の金銭は受託者名義の専用口座で管理する」と書けば、その方法が契約上の方法になります。一方で、不動産の信託登記の義務は契約で免除できません(同条2項)。

分別管理の義務の全体は、家族信託の受託者がすることで説明しています。ここから先は、口座の形の違いと、断られたときの確かめ方に絞ります。

信託口口座と受託者個人名義の専用口座の違い

カードが入ったカードケース
写真: Fructibus / CC0(Wikimedia Commons)

2つの口座の違いは、銀行がその預金を信託財産として扱うかどうかにあります。

表は左右に動かして読めます。

信託口口座受託者個人名義の専用口座
名義の表示銀行の規定に沿った表示。三十三銀行の公式ページでは「委託者〇〇〇 受託者△△△ 信託口」受託者の個人名義。信託のための口座であることは、口座名義だけでは分からない
銀行の関与信託契約書を審査して開設する。専用の特約規定を公開している金融機関もある信託契約書の審査を経ない口座では、銀行は信託の内容を把握していない可能性がある
受託者に何かあったとき特約規定で名義変更の手続きを定めている金融機関がある手続きが定まっていない場合は、銀行に個別に聞く必要がある

表の右の列は、信託口口座の公式ページとの比較から考えられる点です。実際の扱いは銀行ごとに違うため、開設の前に銀行に聞きます。なお、三井住友信託銀行のFAQでは、信託口口座も「受託者さま名義の預金口座」と説明されています。名義が受託者であること自体は、2つの口座で変わりません。

法律上、信託財産は受託者の個人の財産とは別に扱われます。受託者個人に対する債権者は、原則として信託財産に強制執行や国税滞納処分をできません(信託法23条1項。信託財産の債務の債権者などは別です)。受託者が破産手続開始の決定を受けても、信託財産は破産財団に属しません(25条1項)。

この保護を受けるには、その預金が信託財産だと説明できる必要があります。個人名義の口座は、名義だけでは信託財産かどうかが外から区別できません。受託者自身の財産と混ざっていないことを、契約書や出入金の記録で示す場面が出てきます。どの程度の記録で足りるかは、条文からは読み取れませんでした。専門家に確かめる点です。

受託者の交代の場面では、口座の形による差がはっきり出ます。名義変更の手続きは、受託者が亡くなったら・務められなくなったらに書きました。

金融機関が公式に公開している取扱い

石造りの柱が並ぶ盛岡信用金庫本店の建物
写真: Daderot / CC0(Wikimedia Commons)

信託口口座の取扱いは金融機関によって大きく違います。公式のページで確かめられた4つを並べます。条件は掲載時点のものです。

金融機関公式資料で確かめた内容
三井住友信託銀行FAQの更新日は2026年7月9日。専門職(弁護士・司法書士・行政書士・税理士・公認会計士)を通じて申し込む。開設済みの普通預金口座では信託財産を管理できず、受託者名義の新しい口座が必要。条件は、預け入れ金額が原則3,000万円以上、委託者と受託者が本人として嘱託した公正証書による契約、受託者と受益者が国内に居住、など。私文書の契約と、連名の契約は開設できない。口座の開設と管理の手数料は無料
三十三銀行家族信託専用の信託口口座を取り扱う。専門士業が作成した信託契約書で、公正証書であること、金銭を「信託口」等の名称の口座で分別管理する条項があること、後継受託者が指定されていることが留意事項。総合口座は作成不可。口座開設手数料は50,000円(税抜)。ページに更新日の記載は見当たらなかった
飯能信用金庫2023年4月3日から家族信託口口座の取扱いを開始。原則として委託者と受託者が営業エリアに居住すること、自益信託であること、専門家が作成した契約書を最終的に公正証書で出せることが対象の条件。口座開設手数料は55,000円(税込)
ゆうちょ銀行日本郵便の解説ページは、ゆうちょ銀行では家族信託のための信託口口座を開設できないと書いている。同じページは、信託口口座の開設では専門家が作成した信託契約書の提出を求められることがほとんどだとも書いている

3つの金融機関に共通するのは、専門家が作った契約書と公正証書を前提にしている点です。条件に合わない契約書は、断られる理由になりえます。三井住友信託銀行は預け入れ金額の基準を、飯能信用金庫は営業エリアと自益信託を条件に置いています。

この表に載せたのは、公式のページを実際に開いて確かめた金融機関だけです。載っていない銀行や信用金庫が取り扱っていないという意味ではありません。取扱いの有無や条件は、取引のある金融機関の窓口で聞きます。

断られたときに確かめること

銀行のATMコーナー
写真: Rebirth10 / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

断られたときは、順に次を確かめます。

  1. 断られた理由を聞く。金額の基準、契約書の形、居住地、受益者の設定、支店の取扱いなど、理由によって打つ手が違います。理由を教えてもらえなければ、その旨を専門家に伝えます。
  2. 契約書を直せば通るかを聞く。公正証書にする前の案の段階で、銀行が可否を回答する仕組みを置く銀行があります。三井住友信託銀行のFAQでは、口座を開設できる場合に公正証書を作る順番になっています。契約を結んでから断られると、直す手間が大きくなります。
  3. 別の金融機関に聞く。取扱いの有無と条件は金融機関ごとに違います。信託口口座の窓口がある支店かどうかも確かめます。
  4. 個人名義の専用口座の開設を聞く。名義の表示、通帳やキャッシュカードの扱い、受託者が亡くなったときの手続きを、書面で答えてもらいます。
  5. 契約書の分別管理の条項を口座の形に合わせる。34条ただし書により、方法は信託行為に定められます。口座を作ってから条項と食い違いが出ないよう、先に書き方を専門家と決めます。

個人名義の専用口座で進めるなら、次のことも決めておきます。

  • 信託財産のお金だけを入れる。受託者の生活費や、ほかの家族の送金は入れない。
  • 出入金の記録を残す。帳簿は信託法37条が求めるもので、書き方は受託者がすることにあります。
  • 後継受託者が決まっていることを、契約書で確かめる。
  • 委託者の預金から受託者の口座へ移す手続きは、委託者本人が行う。全国銀行協会は、家族でも本人の預金は払い出せないと説明しています。判断能力が衰える前に移し終えておく必要があります。
  • 契約書づくりと口座の準備は、順番が前後すると手戻りが出ます。全体の流れは家族信託の始め方にまとめました。

    口座が決まらないときの相談先

    横浜地方法務局旭出張所の庁舎
    写真: Suikotei / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)

    信託口口座の可否は、契約書の中身と家族の状況で変わります。契約書を作った専門家が、金融機関との事前のやり取りを担うのが一般的です。三井住友信託銀行のように、専門職を通じた申し込みを前提にしている銀行もあります。

    まだ専門家を決めていないときは、口座の取扱いを相談の最初に聞いておきます。契約書を作る費用は家族信託の費用の内訳にあります。

    金融機関の条件は変わります。この記事の表も、2026年11月4日時点のものです。申し込みの前に、各金融機関の最新の案内を開いて確かめてください。

    出典

    いずれも2026年11月4日に確認しました。金融機関の取扱いは変わることがあります。

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